第一章  

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 俺は自由が、欲しかった。

 掴もうと、強く拳を握って手繰り寄せてみても、空気と同じに、それはすぐに抜け落ちていく。
 自由って、一体、何なんだろう。
 そもそも、生まれつきそんなものに縁のない俺に、それの本質の何が、わかってるって言うんだ?
 ・・・自問自答して、少しへこむ。
 でもいつでも俺は渇望し続けている。
 誰にも縛られる事なく在り続けたいと。
 そしてそれこそが、孤高であろうとした俺の師の姿に重なってもいた。

 しかし俺は知ることになる。
 俺は、自由を代償に、この世で最も孤高である者の称号を、既に得ていたのだという事を。

 自ら得るのと、与えられているものとは大きく違う。
 努力して得るものではないそれに、俺は素直に喜ぶ事が出来なかった。

 それを知るにはまだ、俺はガキ過ぎたんだと思う。
 それを知った時に先ず思ったのは。
 素直に、

 めんどくせぇ。

 それだけだったんだ。

+++☆★☆★☆+++


「てめぇふざけんなよ・・・」
 明らかに俺の命を『屁』とも思っていないその言い草。
 俺はだから、お前が嫌いなんだよ!!
 毒吐きたいのを我慢しつつ、でも結局は出てきた俺の毒入りの言葉に、目の前の澄香は、痛くも痒くも臭くもないという優雅な仕種で、無駄にデカイ机に頬杖をついて微笑んだ。
 すましたその態度が、マジでムカつく。
 苛ついたって澄香の魂胆は見えない。
 わざと、わかるように『隠し事をしています』っていうのを匂わせて、俺の様子を嘲って見ているお前が、俺は気に入らないんだよ。
 掌で転がされる方の身にも、なって見ろってんだ、このサディスト。
 白亜の洋館、というのか、俺がいるには似つかわしくないほど瀟洒なこの建物は、目の前にいる花村澄香の居城だ。
 今いる部屋は、その澄香の執務室だ。
 窓を背にするように無駄に豪華な木のデスクがしつらえてあり、そのデスクの上には書類らしい書類もなく、羽ペンだけが澄香の右側に鎮座している。羽ペン、実は澄香が握っている所を見た事がない。これ、本当に必要なのかよ。
 執務室は広く、澄香の背にある窓は大きく、バルコニーからは街を見下ろせる。
 四階に位置する為、今は街の様子は見えず、地平線として遠くにある山々だけが黒々と主張して、月明かりがやけに明るい。
 広い執務室は客人と話す為にあるのか、澄香の右側にはこれまた無駄に豪華なテーブルとソファーがある。
 テーブルの上の板(何て言うんだあれは)は、前にクリスタルだ何とか言っているのを聞いた気がする。
 ソファは木で出来た枠に布が縫い付けてあって、座り心地は良いことを主張している。
 初めてここに連れ込まれた時に一言『豪華だな』と言ったら、侍女たちが目をキラキラさせて、これは『よぅろっぱのちゅうせの建築様式』だとかなんとか。スマン、興味が全く湧かなかったので、俺がその時拾えたのはそのくらいしかない。
 その時は軽く嫌味で言ったんだが、侍女たちの興奮具合や澄香の『それはお褒めに預かりどうも』という、これまた上辺だけの嫌みったらしい返事に、それ以上言うのはやめたし、な。
 燭台が灯す光は、深夜を照らすには心許なく、しかし、相手の表情ははっきりと読み取れる程度の朱を放つ。
 ともすれば男に見えてしまいそうなほどの骨格のしっかりした長身のこの女。
 腰まで伸ばした紫暗色の髪は、一房も乱れることなく背中を滑り落ちている。
 澄香が何なのかはもう、俺も面倒だから特に詮索もしてないが(つか、俺は居候なので、そんなことに口を出すと外野がうるさい、というのはある)、澄香はこの貧民区における上流階級の一人、という感じだというのが俺の勝手な想像。
 貧民区で富を得る、というのは、ま、多分、そんな真っ当な人間じゃないってのは、常識だ。
 で、それを、使用人の身で、本人に問い質す事は非常識、って事くらいはわかってるつもりだ。
 面倒背負い込むと、どう始末されるかも、大体察しはつく。
 そういうのも全部、貧民区で見てきた。
 だけど納得できるか!!
 この状況、冷静に考えれば、俺一人のポカだ。それは反省するし、自業自得だと思う。
 だけど、本能的な何かが、何故か、澄香がこうさせたんじゃないのかと警鐘を鳴らして仕方ないんだよ。
 根拠は・・・色々、ありすぎるほどあるし、ないと言えば、ないんだが。
 ただ、事が起きて、この女のこの落ち着きっぷりを見た時確信した。
 ぐぐ・・・ また、嵌められた・・・って。
「お前の生命の危機に関しては、私の油断があったと言う他ない。先に警告すべきだったな。すまないとは思っているよ」
 その証拠に、その台詞でなんだその笑顔は!!
 突っ込みたいのを抑える。
 俺の危機に駆けつけた兄の弾が、落ち着きなくおろおろと俺と澄香を見比べて狼狽しきっている様子に、逆に俺は若干冷静になった。
 弾は、俺がここに助け出されてから、最速でここに呼びつけられた。
 だから、事情が今ひとつわかってはいなさそうだ。
 その中でも、俺や澄香が放つ『俺の命の危機』だとかいう単語に、動揺せずにはいられないらしい。
 俺と同じように澄香に仕える弾も、コイツには苦労させられてはいるっぽい。
 ただでさえ秘密の多い澄香の事、この居城に住み着いている配下は俺と弾を含んで7名、通いで働く侍女や使用人は15名、他にも仕事で出入りする者多数、相当困らされているかと思いきゃ、逆に澄香に心酔している。
 中性的な容姿は、見る者の目を惹きつける凄みがあり、それだけで何か納得させる迫力はある。
 思慮深く計算高く、腹を探らせずに人から信を得るというのは凄い事だと思う。
 それはわからないではない。
 俺が澄香を嫌う理由。
 それは、どうやら、俺一人にのみ何か秘密を握られないようにしている感が否めないからだ。
「・・・お前さ、魂胆全然見せねぇけどよ、今までの俺への投資、全部パアだぜ。それは平気なのかよ」
「平気ではないさ。だが、そう慌てる事はないだろう。その為の準備は、一応整えておいている。若干の、時間稼ぎは出来るさ」
「若干、かよ・・・ 先ず、俺がどうするべきなのか、それを言え。」
「正直な所、目隠しさせて、耳栓させて、幽閉しておきたいと言うのが本音だ」
「・・・」
 だああああっ、畜生!!!
 不毛な話し合いにしかなりゃしねぇ。
 言葉でコイツを突き崩すのは無理だ。
 つって、力づくで、ってのは余計何つーかガキ臭くて、変にプライドが邪魔して手出しできない。
 ぐうう、本当に、コイツは一体、俺をどうしたいと思ってるんだろう。
「・・・ねえ、澄香」
 不意に弾が口を開く。
 軽く歯噛みしていた俺は、やけにはっきりと部屋に響いた兄の声に、我に返って振り返る。
 先程までの狼狽の色は、まだ顔から消えてはいない。
 でもそこにあったのは、何かを覚悟した、意志の強い目だった。
「これ、言ってた、『その時』が、来たって解釈でいいのかな?」
 キタ。また、やっぱり俺だけ疎外されて周りで何かが動いているような気配の物言いだぞ、弾、それは。
 仲間外れって、何気に、滅茶苦茶傷つくんだぜ兄貴っ。
「弾は察しが良くて助かる。・・・まあ、残念な事に、それが正解だ。だから私が困っているんだ。イレギュラーが起き過ぎた。多少苦慮するだろう」
 全っ然、困ってるようには見えませんが!!
 ふわ、と、笑顔を見せればそう言えばコイツ女だったなと思い出すんだが、それにしても困ってないだろその顔は。
 どうしたって楽しんでる、と言うか、他人事を傍観しているようで腹が立つ。
 澄香は弾を信用している。
 弾も、どうやら、悔しいが澄香を信用している。
 そうやって話す二人の間に、俺は入れない。
「・・・わかった。じゃあ、僕は次に何をすれば良い??」
「!?」
 俺は、驚いて弾を勢いよく振り返る。
 その、俺の少しの身動ぎに、弾も少し驚いた様子で俺を見返してきた。
 見た目には殆ど少女だ。澄香とは、本当対照的に見える。
 弾は、俺とはまったく別ジャンルで働いている。
 俺は実働隊の戦闘要員。
 弾は諜報活動、というのがどうも探ってきた中で思い当たった弾の仕事。
「弾、お前には迷惑かけない」
 咄嗟に言った。
 戦闘員でも、実際、色々やる。俺だって諜報もやることもある。その中で素直に思ったのが、『キツイ』だ。
 情報収集ってのは楽しい事ばかりじゃない。
 嫌な物ばかりを見て、それを取捨選択して、主に伝えると言う作業の細かさは、俺には向いてない。
 と言って、弾はそう精神的に強いとは俺は思ってない。
 だから、適材適所で澄香が弾を使っているとは、俺は思っていなかった。
 ・・・人質。
 俺にとって、弾は澄香に握られている弱味と言っても良い。
 ここに弾がいるから。
 だから多分、俺は、悪態を吐きながらも弾を守りたくて、ここに居座ってる。
 ・・・と思っていたのに。
 弾が、俺を守ろうとして、何かしようとしている。
 俺が今弾に吐いた言葉は、弾を傷つけたかもしれない。
 でも、それで弾を守れるなら、別に誤解されても構わない。
「残念だがそれは出来ない。弾にはまた新たに重要な任務がある」
「お前には聞いてねえ」
「・・・やっぱり、ちょっと早かったんだね。澄香、時期を見誤ったよ」
「あ?」
「そうだな・・・ しかし事件が大きすぎたのでな、あれを先ず片付けたかったんだ・・・ 失敗したよ。まさかいきなりラスボスとはな」
「ナニがだ?」
「ラスボス!!?? ってことは、まさか・・・??」
「オイ、なんなんだそれ?」
「そうなんだよ、弾。急転直下の青天の霹靂なんだ。あ、でも夜だったな、事件がおきたのは。晴天はおかしかったか。まぁそれはいいとして、兎に角困った事態なんだ。どうする?」
「オイお前ら!!! 人の話を聞けっての!!!!」
 だから俺は、仲間外れにされるのは嫌いなんだっつーの。
 もう何でもいい、兎に角仲間に入れろ、お前ら。
 って言うかさ、俺、そう言えば命の危機じゃなかったでしたか?
 猛毒が、体を駆け巡ってるんですが処置はしないんでしょうかね?
 本当に、俺がタフだからと言って、お前ら俺を放置するよな。
 少し惨めになってきた。
「まぁ、そう、慌てないで、伸太郎。僕達は色々用意はしてきた。君もそれは良くわかってるだろ」
「何か知らんが色々はやってきたとは思うけど、とりあえず俺には話が見えないんだよ」
「だから、早すぎたとさっきから弾が言っているのだ。伸太郎がまだ未熟な為、次の作戦に移行できるかどうかを検分している最中だ。私としては、あの猛毒の威力の恐ろしさを知っているし、いっそ、餌として撒いた伸太郎の居所が此処だと知られる前に、目隠しをして、耳栓をして、暫くの間は幽閉しておきたいが、それも安全策とは最早言えない。事情が色々あるのだ」
 くそう、説明は一通りしてはくれるんだが、それも全く良くわからん。
 何語を話しているんだこいつは。
 待て待て。
 一つずつ、拾った単語について考えた方がいい。
 俺が未熟・・・ってのは、もう、わかりきったことだ。そんなこと指摘されても痛くも痒くもない。
 ・・・んだが、どうも、作戦の肝は、相変わらずまた俺にあるっぽいな、澄香の口ぶりから察すると。
 ・・・と、いうのをまた確認すると、俺は自己嫌悪で自分がとっても嫌になるんですが、お前らそういう配慮、してくれないよな。
 悪かったよ、無能力者でよ。畜生。
 努力して努力して努力して、それで得られる能力なら、俺だって頑張る。実際、修行の手は抜いてない。
 でも・・・なんだ、アレだ、レベルが上がるのに矢鱈時間かかる奴っているだろ。経験値は入っているのに、全然育たない奴。
 ひょっとして、俺はそういう『使えない奴』なんじゃないのかと思う。
 一般人よりは、格段に、得ている経験値は多いつもりでいるんだけどな、結果が出ないんで本当はどうなんだか・・・
 くそ、これでも性格は前向きで脳味噌筋肉で出来てる自覚あるのに、何気に自分の無能さを考えたら落ち込んできたじゃねぇかよ。
 意識転換。別の単語のこと考えるべし。・・・逃避じゃん。
 で、ああ、そうだ、猛毒。
 こいつ覚えてたのか。
 さっき、首から打ち込まれた猛毒は、そう言えば、打ち込まれた時こそ物凄い勢いで全身を駆け巡ったけど、今は落ち着いてる。
 いや、毒が消えた気配はないけど、俺を死に至らしめるものではないんじゃないか、というのが、今の俺がピンピンしていて思っていること。
 だから、咄嗟に逃げ切った今、毒のことでそんなに意識を乱さずに済んでいる。
 でも勿論、平気なわけじゃない。消しとかないと物凄く気持ち悪い。気持ちが悪い、なんて生易しいもんじゃない。反吐が出そうなほどの、嫌な感触がまだ残っている。
 打ち込まれた時、全身の血管に、異形の蟲が駆け抜けるような不気味な恐怖が全身を駆け巡った。
 あの蟲が、俺の体の隅々までいきわたって、俺自身を、支配してしまうあの感触。
 それだけが、未だに体に残っている。
 あれは、毒と表現していいのかはわからない。
 多分・・・ あれは、ウイルスと言う方が正しいのかも知れない。
 でも、体に入れられ実際不快がある以上、今のところ『毒』とか『黴菌』と表現するほかない。
 癒しの術式とかで、ぱぱっと、消してしまえないのかね、これ。
 いつもの澄香ならこんなに長い間に俺の傷を放置したりはしないくせに、今回は、オメガに血液サンプルとらせて当て布をテープで留めただけで、今のところ処置なしだ。
 威力と言うか、毒にも色々『型』があるから、それの解析が終わらないと解毒は難しいんだろ。
 こっちの専門分野も一応叩き込まれているんだが、才能がないのか全然わからない・・・
 悔しいが、オメガの解析結果を待つしかない。
 そう言えば毒の話のときにも目隠しとか耳栓とか幽閉とか言ってたなこいつ。
 ・・・どういう意味だ?
 ・・・うう、門外漢がどう推理してもわからん。とりあえず置いといて。
 んで最後。
 少し聞き捨てならない単語があったよな。
 『餌として撒いた伸太郎』って、確かに言ったよな、こいつ。
 そりゃー一体、どーゆーこった!!!
 またか!!
 また俺は、お前の撒き餌として扱き使われたって事なのか、この野郎!!
 俺に数々の投資をしてはいる澄香。
 とりあえず、喰いっぱぐれないでいることだけには、澄香には感謝している。
 が、その投資のお陰で、何だかよくわからん危機にいつも追い込まされる俺。
 よく考えたら、これはいつも通りの澄香の作戦のような気もしてきた。
 俺のポカも全部、澄香の計算の中にあったのではないかと思えて、一度頭に昇った血が、急速に冷めていくのを感じる。
 脱力。
 結局、俺はこいつに踊らされてただけだったな・・・ 敗北。
「少し時期尚早だが・・・ 逃亡準備を始めようか。カイ、デルタ、オメガ。それにプサイにファイ。集まれ。今後の方針を決める」
「おい、決めるって、お前な・・・」
「待って。」
 さっさと事を進めようとする澄香を諌めた俺を、弾が止める。
 訝しがる俺に、安心しなよ、とでも言いたいのか、弾は笑顔を向けて、もう一度まっすぐ澄香を見た。
 弾って、こんなに、芯の強い奴だっけ・・・
 俺はどこかで、澄香とは逆で、下手をすりゃ女の子みたいに見える兄を、見下していたんだろうか。
「いいよね、もう」
 短い言葉だが、それで、充分澄香には弾が何を言いたいのかは伝わったらしかった。
 澄香は、ふと、少しだけ寂しそうに見える笑みを宿し、そのあと溜息を吐いた。
「仕方がないな・・・」
「いいの?」
「本当は、面白くないからもう少し溜めて置きたかったんだが・・・」
「そういう事言うから、伸太郎に信用されないんだよ、澄香は」
 言い合って、お互い苦笑する。
 お前ら何なんだその仲の良さは・・・
 本当に、相変わらず放置されている俺。
 そして、笑いあっていた二人が同時に俺を見る。
 空気が変わる。
 ナンデスカこの緊張感。

「伸太郎。ずっと黙っていたけど、君は、凄い奴なんだよ」

 弾が、俺にそう言った。
 いやいやいやいや。
 物凄く、勿体つけて言ってくださいましたけれども。
 ・・・それ、結構、毎日のように言ってくれるから、俺が調子付く台詞ですが、ほかに何かないんでしょうか?
 自惚れちゃうぞと思うくらいに、毎日毎日凄い凄い言ってくれるじゃん、お前。
 煽ててくれるのは確かに嬉しいんだよ。素直に。
 でも、今此処で、そう煽てたって、どうやって俺を躍らせますか、君は。
 明らかに呆然とする俺を見て、澄香が肩を震わせて笑い出した。
「弾、それじゃ、伝わらないよ。・・・しょうがないな、私が順を追って説明しよう。すまん、オメガ。報告受け取った。もう少しかかるから、他の面子にも部屋の外で控えているよう伝えておけ」
「はっ。」
 部屋の角に、澄香に呼ばれて瞬間移動で一瞬で現れていたオメガは、澄香にそう命じられて短く返事をし、さっきと同じように空気に溶けるように再び空間転移で姿を消した。
 音もなく現れたオメガを俺が警戒しないのは、オメガが悪意を持つ奴じゃないのを知っているから。まぁそれは後での話にしておいて。
 澄香の執務室のここは、居城の中庭に面した大きな窓から、天高く昇った大きな月灯りを流し込んで、ぼんやりした燭台の灯りを助けていた。
 窓を背にするように座る、執務室で一番目立つ大きな机に頬杖をついていた澄香が静かに立ち上がる様子を注意深く見守る。
 執務室全体は広く、デスクの横には来客用のソファが卓を囲んでしつらえてあり、澄香は足音のしない歩みでそれに腰掛け直し、俺に向かい側に座るように示した。
 ソファは上質の布で包まれており、決して座り心地は悪くないんだが、俺はそれに座らされるのはあまり好きではなかった。
 でもここでウダウダ言っても仕方ないので、大人しく座る。
 弾も俺の真横に座り、少しだけ場の雰囲気に気圧されそうだった俺に一言「大丈夫」と言った。
 僕もついているから。
 そう言っているように思えた。
 挑むように、澄香を見る。
 その顔には、いつもの優雅な笑みは、宿っていなかった。

「勇者。って、知っているか?」

 ・・・は?
 質問の意図がわからない。
 急に話、飛んだよな、今。
「知って・・・るけど???」
「・・・聞き方が悪かったな。・・・そうだな、現存する勇者、というのを聞いたことはあるか」
「知ってるって。一般常識だろ。この世でもっとも強いって、すげー人だよ」
「良かった。話が早い。それなんだよ」
「は?」
 お前、何言ってんの?

「伸太郎。お前は、勇者であるシアドの血脈にある人間。しかも、あの複雑な契約すら完了している人間。つまりは・・・
 この世で、最も、猛き者の名をほしいままにする者だ」

 ・・・・・・・・・・・・は?
 い、意味わからん。
 何だそれ。
 待て待て。
 お前ら、俺のピンチにいきなり何言い出すかと思いきゃ、そんな嘘吐いてどーすんだよ。
 信じるわけないだろそんなの。
 大体、凄いんだぞ、その人はっ。
 この世で知らない人は、いないってくらい凄い人なんだぞそれはっ。
 それが。
 無能力者のこの俺と。
 同じ資質の人だなんてありえねぇ!!!
「ま、待って、落ち着いて。ちゃんと、全部、伸太郎が噛み砕いて理解するまで説明するから。でも本当なんだ。僕も、血脈だけは同じだって、断言する。それは確認済みなんだ」
 とかなんとか。
 弾が、俺を宥めている間にもパニックは収まらない。
 パニックして大騒ぎの俺の頭の中で、もう一人の俺が冷めた目で見ている。

 あーあ。何かめんどくさいことになってきたな。

 パニックしていたので、とりあえず、そんなずぼら出ちゃいました。
 でも、そんなズボラ思考回路のお陰で、若干冷静に戻る。

 くそう・・・ このネタ、重たすぎるぞ!!!

2007/12/07 up

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小声で編集後記のコーナー。
どんどんどん、ぱふー(古)。
ここは、気付いた人だけにお届けする編集後記のコーナーです。
気付かなかったらそれでよし、気付いた人は、意外と損をするかもしれない微妙なコーナー(爆)。
いやいや、書き上げた時の自分の気持ちをとりあえず書き記しておきたかったので、設けましたー。
それと、色々恥ずかしかったりもするので、言い訳として記しておきたいみたいな・・・
そんな、自分ツッコミのコーナー、別名『キリトの自虐の部屋』でございます(何)。
もしかしたらちらりネタバレがあったりもするかもしれないので気をつけて書かねば。

まだまだ、序の序、なので、全然わけわかりませんでゴメンナサイですー。
結構、自分が処理し切れてないような設定てんこ盛りなので、一個一個片付けて行きたいと思いますので、長い目で暖かく見守ってくださると嬉しいです。
えーとそのうち、挿絵も入れますねー。
キャラの容姿の説明が追いつかない(涙)。
それと、小ネタですが、ファイΦ、カイΧ、デルタΔ、オメガΩ、プサイΨの名前の由来は・・・
アレです。言いませんが、言い回しを変えてみました。
安易だな自分・・・(苦笑)